「社員自らが考え、成長する会社に」──第二創業期を経たアプリックが描く、これからのかたち

レッド

written by ダシマス編集部

株式会社アプリック

長野駅から徒歩4分。地域に根ざし、ソフトウェア開発やSES(システムエンジニアリングサービス)を手がける株式会社アプリック(以下、アプリック)。

2020年にシステム開発企業・パワーエッジのグループに加わったことを機に「第二創業期」を迎え、社員数や事業を伸ばしながら、一人ひとりが主役となる組織づくりを進めています。その舵取りを担うのが、代表取締役の新井誠至さんです。「業務を理解して初めて、技術が生きる」。そう語る新井さんに、アプリックという会社の姿と、そこで働く面白さ、そしてこれから目指す会社のかたちをうかがいました。 

代表取締役社長 新井 誠至(あらい せいじ)さん

代表取締役社長 新井 誠至(あらい せいじ)さん

就職氷河期を経てコンピューターインストラクターの道へ進み、約6年にわたって技術者の育成に携わる。その後、「教える技術を生かせる仕事を」とシステム開発会社に入社し、一から技術者としての経験を積む。2020年、アプリックがグループの一員となったことを機に同社の経営に携わり、現在は代表取締役として、採用・育成・組織づくりを牽引している。

地域とともに歩むIT企業が、新たな一歩を踏み出す 

──新井さんが代表を務めるアプリックは、どのような会社なのでしょうか。

SES(システムエンジニアリングサービス)やソフトウェア開発を手がけている会社です。「地域に根差した企業でありたい」という思いのもと、長野のお客様を中心に、システム開発やIT関連の幅広い仕事をお引き受けしています。

事業の主軸となっているのはSESです。これは、エンジニアが足りていないお客様のプロジェクトに、その現場で求められる技術を持った技術者が参画し、力を発揮していく事業を指します。自社で一つのサービスを持つのではなく、さまざまな現場に関わっていくところが私たちの特徴です。

社員には、IT未経験で入社した人も少なくありません。だからこそ、先輩がしっかりとサポートし、会社として一人ひとりを育てていく体制を整えています。

──アプリックは2020年に、パワーエッジ(東京)のグループに加わったそうですね。

はい。アプリックには、長く会社を築いてこられた前の経営者がいましたが、ご高齢もあり、2020年に事業を引き継ぐことになりました。その受け皿となったのが、東京でシステム開発を手がけるパワーエッジです。私はもともとパワーエッジに在籍していて、アプリックの経営や採用、育成にあたるため、月の半分ほどを長野で過ごしています。

グループに加わってから、社員数は買収当時の20名ほどから今では37名へと増え、事業も着実に伸びてきました。ただ、私が何より大切にしているのは、規模を大きくすること以上に、アプリックが受け継いできた「地域に根差した企業でありたい」という思いです。その土台の上で、社員一人ひとりが主役となれる会社をつくること。そのための育成や組織づくりに、いま力を注いでいます。いわば、6年が経った今も"第二創業期"のただ中にいるような気持ちで、理想の会社を追い続けているんです。

──ホームページのトップメッセージで「いい会社を目指す」と掲げていらっしゃるのが印象的でした。新井さんにとっての「いい会社」とは、どのような会社でしょうか。

社員一人ひとりが自ら考え、成長していける会社です。どうすれば会社がもっと良くなるのかを社員それぞれが考え、その力が複合的に混ざり合って会社全体が伸びていく。そんな姿が理想だと思っています。

私たちの事業は、自社のサービスではなく技術者を軸に成り立っています。社員がいなければ、会社そのものが立ち行きません。だからこそ、この会社で働いてよかったと社員に思ってもらえること。それを何より大切にしたいのです。

 

多様な現場が、“どこでも通用する”技術者を育てる  

──アプリックで働くと、どのような経験を積むことができるのでしょうか。

SESの一番の魅力は、さまざまな業界やプロジェクトに携われることだと思っています。自社で一つのサービスを持っていると、そのサービスに詳しいエンジニアは育ちますが、どうしても分野に偏りが出てしまいます。その点SESは、扱う業務も、業種業態も、使う技術や言語も、一つに縛られることがありません。

だからこそ私は、限られた分野で尖るスペシャリストよりも、どんな仕事でも受けられるゼネラリストであってほしいと、社員によく話しています。 

──さまざまな現場に関わるなかで、社員のみなさんに特に意識してほしいと考えていることはありますか。

技術力そのものよりも、その業務がどんな考え方で動いているのかを理解すること、つまり「業務知識」だと思っています。いまはAIも普及して、ネット上にも技術に関する情報があふれています。技術的な知識は、調べようと思えばいくらでも調べられる時代です。だからこそ、差がつくのは業務そのものへの理解力、理解の深さだと私は思います。

たとえば販売管理、経理、人事給与といったシステムには、それぞれの業務ならではの考え方があります。そこを理解していなければ、どれだけ優れた技術を持っていても宝の持ち腐れで、お客様が本当に求めるシステムを正しくつくることはできません。業務を理解して初めて、技術が生きるのです。

私自身、まだ駆け出しの技術者だった頃に、ある複合機メーカーのシステム開発に携わったことがあります。複合機は、印刷した枚数に応じて費用が決まり、枚数が増えるほど1枚あたりの単価が下がっていく。そうした料金の仕組みを、システムをつくる過程で初めて知りました。その業界がどのように成り立っているのかを、肌で理解できたのです。

SESでは、こうしてさまざまな業界の仕組みや仕事の進め方を間近で経験できます。まず業務知識を身につけ、それをシステムとして形にする技術を磨いていく。その二つの軸で成長できることが、この仕事の面白さだと思っています。

──受託開発では、また違ったやりがいがありそうですね。

受託開発はお客様が抱える課題を技術の力で解決していく仕事です。いまの業務のどこに問題があり、それをどう解決するのか。そのパズルを解くことを楽しめる人には、とても面白い仕事だと思います。

そのとき欠かせないのがコミュニケーション力です。ただ物怖じせずに話せることではなく、相手に物事を正しく伝える力と、足りない言葉から相手の意図を汲み取る力のことなんです。お客様はシステムに詳しいわけではありませんから、要望が抽象的だったり、言葉が足りなかったりすることも少なくありません。その中から本質を引き出せるかどうかが、大切になります。 

 

ラジオの流れるオフィスで、“つながり”を育てる 

──社内は普段、どのような雰囲気なのでしょうか。

オフィスにはラジオが流れていて、仕事とはまったく関係のないたわいもない話もします。全員が無言でモニターに向かい、ひたすらキーボードを叩いている、といった職場ではありません。

私はどうも、重苦しい職場が好きになれないんです。何時間も黙りっぱなしで過ごすよりも、生活音があったり、ちょっとした雑談があったりするほうがいい。「こんなニュースが出ていましたね」といった何気ない会話が、ほどよい息抜きになればと思っています。最初は私から声をかけることが多かったのですが、今ではその話に自然と乗ってくれる社員も増えてきました。 

──社員同士の交流を増やすために、取り組んでいることはありますか。 

正直に申し上げると、一昔前のアプリックは仕事をするためだけの組織で、社員同士が交流する機会がほとんどありませんでした。同じ会社にどんな人がいるのかもわからない、それくらい交流の場がなかったんです。

それは私が求める会社の姿ではなかったので、まずは社員が顔を合わせる場をつくろうと考えました。月に一度、チームで集まる会議を開き、そこで技術の勉強会をしたり、納涼大会やバーベキューといった社内イベントの運営を任せたり。内容はそれぞれのチームに委ねています。

そうした場を重ねるうちに、これまで職場と自宅を往復するだけだった社員にも少しずつ会話が生まれ、「自分はアプリックの一員なんだ」という感覚が芽生えてきたように感じます。 

──社員の方が自ら動き出した、という点で印象的な出来事はありますか。 

昨年(2025年)、社員たちの発案で、システム開発を実践的に学ぶ「部活動」が立ち上がりました。私が個人的にうれしく感じている出来事の一つです。

「システム開発のこういうフェーズを経験してみたい」という声から始まり、今では7〜8名が参加しています。要件定義に何が必要か、どんな開発環境を用意すべきかといったことを、実際に手を動かしながら学んでいます。会社から「やりなさい」と指示したものではなく、社員自身の気持ちで動き出した。これは、会社にとって大切な一歩だと感じています。 

 

安定を土台に、変化を楽しむ。若手が主役になれる会社へ 

──今後、事業をどのように展開していきたいとお考えですか。

事業の柱は、これからもSESを中心に据えていきます。受託開発も大切にしていますが、割合としては1〜2割にとどめる考えです。というのも、受託開発は見積もりや要件定義の段階で見通しが立てづらく、規模を広げるほど経営が不安定になりやすいんです。一方でSESは、月ごとに安定した形で事業を回せます。まずSESでしっかりと足場を固め、そこで生まれた余力で受託開発に取り組んでいく。そのバランスが、社員に安心して長く働いてもらううえでも、いちばん健全だと考えています。無理に規模を追うのではなく、着実に、長く続けられる会社でありたいですね。

その一方で、AIの進化からは目を離せません。将来的には、プログラミングの多くはAIが担うようになっていくでしょう。ただし、AIをうまく使いこなせるかどうかは、結局その人がどれだけ現場の経験や業務知識を持っているかにかかっているのではないかと思います。私自身、最近AIを使って開発を試していますが、表面上は見えないエラーにぶつかったとき、「これはこういう原因ではないか」と当たりをつけられるのは、これまでの開発経験があるからです。アプリックの多様な現場で積んだ経験は、AI時代にこそ強みになる。そう考えています。

──最後に、どのような方がアプリックで生き生きと働けると思いますか。 

一つは、問題を解決することを楽しめる方です。お客様の課題に向き合い、少ない情報からパズルを組み立てていく。その過程を楽しめる方には、きっと合うと思います。もう一つは、学び続けられる方ですね。今は社員の平均年齢が高めですが、その分、これから入る若い方には、早くからリーダーを目指せるチャンスがあります。ベテランの知見を受け継ぎながら、一緒に会社の未来をつくっていってほしいですね。 

 

(取材・執筆:大久保 崇

 

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